昨日、作家の宮尾登美子さんがご逝去されたとのニュースを聞きました。
宮尾さんの代表作、『天璋院篤姫』は私の愛読書です。
10年以上前、最初に買った文庫本はボロボロになるほど読み込んで、
現在は二代目。
この作品を読む前から天璋院のことは知っていましたが、
通説で言われている、「嫁(和宮)をいじめる意地悪な姑」の
イメージしかありませんでした。
(テレビドラマでもそういう風に描かれていたし)
その長年コチコチに固まっていた天璋院像に疑問を持った宮尾さんが
書き上げたのがこの作品です。
作品中の天璋院は上に立つ者としての器量を備えた
聡明で意思の強い女性です。
この作品は私のイメージを180度変え、
「こんな女性になりたい!」と思わせるほどのものでした。
宮尾さんの作品で読んだのは『天璋院篤姫』と、
この『東福門院和子の涙』だけですが、
この作品も好きですね。
三代目将軍・徳川家光の末妹、和子(まさこ)のお話です。
天皇家に嫁ぎ、国母に上り詰める栄光の影で、
朝廷の冷たい仕打ちに耐える和子の姿が描かれています。
私は歴史小説が好きなのですが、読むのはほとんどが女性作家の作品。
女性作家の作品には定説にとらわれない、新しい切り口で書かれた
ものがけっこうあるので好きなんです。
自分では“偏食家”ならぬ“偏読家”と思っています。
宮尾さんは歴史もの中心に書かれているわけではありませんが、
入念に準備をされるとのことで、歴史ものも秀逸です。
素晴らしい作家がまたひとり逝ってしまわれました。
本当に残念です。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。